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その82:立川ビジネスセンタービル西側入口前
未 来 は 今
Tatsuo Kawaguchi
copyright:photo byS.Anzai
 立川ビジネスセンタービルの東側の入口前には桂の木が植えられていますが、よく見ると、その中の3本に、金属の輪が取付けられているのがわかります。輪は南京錠で閉じられ、金属製の小さなタグが取付けられています。
これは河口龍夫さんのアート作品です。とはいうものの、河口さんのアートは「もの」を見せるのではなく、「ものとものとの関係」を考えさせるコンセプチュアルアートです。この作品の銅の輪の大きさは、タグに刻まれている年号における木の太さを想定して決められています。そして、木の太さが輪の大きさと一致したときに錠を外して輪を取り外す、ということを予定しています。しかし、この作品において想定されている年号は、2089年・2116年・2132年という、おそらく僕もあなたも死んでしまっているだろうと思われる年です。「銅の輪の円周が推定された年と樹木の実際の成長が合っていたかどうかは、実は重要ではない」と河口さんはいいます。大事なのは、未来と関係する仕掛けを設置することによって、実態がさだかではない未来と現時点のままで関係する、ということなのです。2089年・2116年・2132年には僕たちはもういないだろうからこそ、いま、このままで未来と関係するために、この作品はまだ細い木の幹に所在なげにぶら下がっているのです。
作品のタイトルは、「関係―未来・2132年」「関係―未来・2116年」「関係―未来・2089年」となっています。


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