
冬の吐く息が白くなる早朝6時30分過ぎ、まだ日の出前の薄暗いホームに特急車両が入ってくる。ホームには、長い列。黒いコートにビジネスバックのビジネスマン風の姿が多い。最初にこの光景を拝島駅で見たときには、「なんなんだろう?」と不思議に思ったものだが、神田への遠距離通勤になって、この電車に自分が乗ることになろうとはそのときは全く想像していなかった。
青梅ライナー。上りが1本。下りが2本。1日に3本だけが運行されている。上りは、青梅発で、拝島駅の出発時間が6時37分。下りは、始発の東京駅発が、19時と22時30分。乗車券の他にライナー券500円が必要である。全席指定となっている。座席数は少ないが700円のグリーン車もある。停車駅は、青梅、河辺、拝島、立川、新宿、東京のみ。車両は、中央本線特急のかいじなどと同じ特急の車両で通路を挟んで2列ずつのリクライニングシートである。
羽村からのぼりを利用しようとすると拝島駅が近いが、拝島駅ではホームの青梅寄りで駅員が販売する。拝島で販売するのは、8,9,10,11号車。500円を払い、「11号車の窓側をお願いします」のように、席の希望を伝える。早朝で寝ている人がほとんどなので、新宿で降りる人は通路側を指定するようだ。東京駅までゆっくり寝ていたい人は、窓側を指定すると新宿で降りる人に邪魔されずにすむ。いつも窓側の席が先になくなってしまうようである。会議が多いのか、月曜日の朝は他の曜日と比較して利用客が特に多い。8,9号車用と9,10号車用の2箇所の入り口に分かれて列を作る。これが、知らない人が見るとなんだろうと思えるホーム上の列である。立川駅は自動券売機になっていて、東京寄りのホームにある。
早朝便の青梅ライナーは、ほとんどの人が寝ている。まず自分の席に着くとブラインドを下ろし、リクライニングシートを倒して寝る準備をする。乗り込む頃は暗闇でも、途中で朝日が差し込んでくるのでブラインドが下りていないと、まぶしい光が差し込んでくるのである。帰りのライナーは、ブラインドを下ろす人はほとんどいない。帰りは仕事をしている人もいるし、二人で乗り込んで話をしている人などさまざまである。
中央ライナーもたまに利用することがあるが、古い特急車両だと乗り心地が良くない。立川で乗り換えないといけないし、同じ500円でも損をしたような気がする。その点、青梅ライナーはきれいな車両なのはいい。19時の便はほとんど利用しないが、東京駅22時30分発の青梅ライナーはよく利用する。東京駅22時14分発の青梅特快で帰りたいと思いつつ、微妙に間に合わないことが多いのだ。前の会社を起業して忙しくなってから約1年間は、早朝の青梅ライナーで出勤し、帰りも22時30分の青梅ライナーという生活をしていた。これは結構きつい。睡眠時間は4時間台、平日は子供と顔を合わせることができない。ライナーの中で睡眠時間を確保していたようなものである。冬場は、家を出るときも帰るときも星空である。
ライナー券500円。高いと言えば高いが、往復利用して1,000円、1ヶ月に20日間利用しても2万円。給料からその分が最初からないものと思えばなんとか納得できる範囲の額だろう。最近乗車マナーの悪い人も多いので、不愉快な思いをせずにすみのもよい。自分の会社を興してからはさすがにもったいないと思うようになり、しばらく利用していなかったのだが、またときどき利用するようになった。特に寒くなって足元からの暖房と着膨れして込み合った座席に長時間座るのがきつくなってきたのだ。今では、仕事の忙しさに応じて早朝と遅い帰りにときどき利用している。帰りのライナーの拝島駅での普通電車への接続が悪いのはちょっと残念である。
青梅ライナーでの通勤を経験してから、青梅線の生活も悪くはないなと少しだけ思うようになった。プチ贅沢とも言えるが、健康面、時間の有効利用という面でのメリットもある。おそらく、いつも利用している青梅ライナー族は、必要経費と割り切って一日のリズムの中に青梅ライナーの時間が組み入れられているのだろう。朝早くスタートするための早朝のライナー、がんばって遅くまで仕事した自分へのちょっとしたご褒美の帰りのライナー、できればどちらか一方だけにしたいが、これからもたくさんお世話になりそうである。
(2007年6月追記)
最近は、電車通学を始めた子供と一緒に出かけるようになったため、朝のライナーに乗ることがなくなったが、先日久しぶりに利用した。それも雨の降る月曜日。いつものとおりに拝島駅からの利用であるが、なんと、列車到着前にライナー券が売り切れてしまった。月曜日は利用客が多いとは言え、到着時間に余裕を持って売り切れることはなかった。近隣の大型マンション建築の影響なのか利用客が増えた模様である。ホームで並ぶ列も、10号車口の列は1列だったのが、2列整列に変わっていた。中央線を複複線化するなどしてライナーの本数がもっと増えるとよいのだけれど。つくばエクスプレスが開通したつくばは、秋葉原まで快速で45分と西多摩地区よりも都心からのアクセスがよくなった。高度成長を支えた中央線も通勤主体から多様なライフスタイルへの対応を考えた大幅な改革が必要な時期に来ているのではないだろうか?

Last update: June, 2007